医療関係者が白衣を着る理由と現在の状況について

白衣は医者が着用する衣類として広く知られています。診療科目を問わず、医者なら誰でも白衣を着るイメージがあるのは事実ですが、医療の現場で白衣が用いられている理由はあまり知られていません。また、価値観の多様化や衛生管理の方法の変化によって白衣の需要やデザインも変わっています。

白衣の歴史や医療現場における扱い方について学びましょう。

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現在のイメージに近い白衣が普及したのは19世紀以降

医者と言えば膝の部分まで長い白衣を着用しているイメージがありますが、このイメージが定着したのは19世紀の後半以降です。それまでは医者が着る衣類は様々であり、地域ごとでもっとも普及している衣類をそのまま転用するのが普通でした。

欧州では医者の服装は全身をすっぽりと覆う黒いコートでしたが、これは黒い服が礼服であり、医療の現場に相応しいとされていたためです。

また、黒い色は汚れが目立たないという実利的な理由も含まれています。全身を覆うコートが用いられていたのは当時の医学では悪い空気が病気の原因と考えられていたことに由来しています。悪い空気に触れないように、素肌を晒さないコートが医者の衣類に最適と考えられていました。

欧州以外の各国では医者であっても普段着で診療を行うのが普通でした。王族や富裕層などの上客を相手にする際は高級な衣類を着用することもありましたが、これはあくまでも儀礼的な意味です。当時の医学では衛生管理という考え方すら存在せず、体や衣類の汚れに関してはまったくの無頓着であったと言っても過言ではありません。

19世紀後半になって衛生管理の重要性が理解されるのに伴い、医者が着る衣類も清潔であることが求められるようになりました。その結果として白衣が広く普及するに至ったのです。

白衣はわずかな汚れも目立つので衛生管理に便利

白衣のような白い生地の衣類はわずかでも汚れが付着するとその部分が目立ちます。見栄えが悪くなりやすい欠点がありますが、その欠点こそが医療の現場では重要とされています。汚れに混在している雑菌は様々な感染症の原因になります。

健康な人ならほぼ無害であっても、加齢や病気などの理由で体力が低下している人にとっては非常に危険です。病院で治療を受ける人の多くは健康な人よりも体力が低下しているので感染のリスクが高くなっています。そのような場で汚れた衣類を着用するのは感染を促すのに等しいと言っても過言ではありません。

白い生地が使われている白衣ならわずかな汚れでも目に付きやすいので、気付かないうちに汚れた衣類のままで診療を行うミスを防ぐことができます。同様の理由で看護師など医者以外の医療従事者の衣類もその多くに白衣が採用されています。

また、食品や医薬品の製造工場で働く人の制服に白衣が用いられているケースも少なくありません。

白衣特有の問題点がデザインの多様化に繋がる

汚れが目立ちやすく衛生管理に便利な白衣ですが、その一方で白色ならではの問題があったことも事実です。白衣に数滴程度の血液が付着しても非常に目立ってしまい、患者に不安感を与えてしまう問題が早くから指摘されていました。

また、白色には無機質で冷たいイメージがあるため、その点が患者の精神を疲弊させてしまうことも問題視されていました。衛生管理の面から見れば医者にとっても白衣は必ずしも扱いやすい衣類とは言い難いのが事実です。

こまめに取り換えたり洗濯を繰り返す必要があるので複数枚を用意することになります。生地の劣化による色落ちが薄汚れた感じに見えてしまう点も白衣が敬遠される理由のひとつです。これらの点から現在では白衣でありながら白色以外の生地で作られている物が主流になっています。

デザインも多様化し、機能性を重視した物やおしゃれな外観を持つ物が少なくありません。

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医療現場のトラブルを未然に防ぐ目的もある

白色以外の白衣が普及した理由として補色残像への配慮があります。補色残像は目の錯覚の一種で、ある色を長く見続けているとその色の反対に該当する補色が残像として見えてしまう現象です。医療の現場では血液の赤色を長く見続けていると、補色である緑色の残像が見えるようになります。

こうなると医療業務に支障をきたすため、補色残像が起きないように工夫する必要が生じました。医者の場合、仕事着でもある白衣を赤色の補色である緑色や青色の物に取り換えることで補色残像を未然に防ぐことができるようになりました。

手術着が緑色や青色の生地で作られているのはこのためです。現在では白衣に限らず、ベッドのシーツや建物の壁など目に付きやすい物の多くに緑色や青色が使われています。

白衣は生地が頑丈で長持ちする物を選ぶことが重要

医療用の白衣は専門業者から購入するのが従来の常識でしたが、現在では工業用のユニフォームを扱う業者が増加しています。高品質でありながら安価で購入できる物が多く、デザインも多彩なことから機能性だけではなく個人の好みで選ぶことも難しくありません。

ファッション性の高いデザインの白衣も出回っていますが、医療の現場で長く愛用するなら頑丈で長持ちする生地で作られた一着を選ぶことが重要と言えます。医者は加齢や病気によって心身が弱っている患者を相手にする仕事なので、何よりも信頼されることが大切であることは間違いありません。

安心して頼ることができるイメージを持つことが重要なので、生地がよれよれだったりほつれが生じている白衣を着るのは相応しくないと言えます。どのような衣類であっても洗濯を複数回行えば生地が傷んでしまいます。色落ちやほつれは避けられない劣化ですが、それでも生地が頑丈で丁寧な作りなら簡単に傷むことはありません。

高額でも高品質な白衣を選ぶことが良好な状態で長く愛用するための条件と言えます。同じ医者でも清潔感のある綺麗な白衣と、色がくすんであちこちがほつれている白衣では患者が抱くイメージに大きな違いがあります。質の高い医療を実施するには医者と患者の間に強固な信頼関係が構築されていることが重要な条件です。

患者から信頼されるためにも、仕事着である白衣の選択は決して疎かにしてはいけません。

医療現場の常識の変化が白衣の多様化をもたらした

医療現場は常に清潔であることが原則であり、医者をはじめとする医療従事者は自身の身だしなみに細心の注意を払うことが必須でした。白衣が普及したのは汚れが目立ちやすく、清潔なイメージがあるのが理由です。現在では衛生管理の効率化や白色がもたらすイメージの問題から白色以外の白衣が主流になり、デザインも機能性やおしゃれを重視する傾向にあります。